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「大地をいただけ!」??? [日本語・外国語]

最近、某メーカーのカレーのCMで「大地をいただけ!」というキャッチコピーが使われています。

「いただく」という表現は、「食べる」の謙譲語のはず。
謙譲語ですから、自分の動作について使うのが基本です。
自分以外に使う例としては、子どもに向かって「○○○いただきなさい」と言う場合など、”謙譲”する相手を意識して、身内に使う(命令する)ということはあり得ると思います。

しかし、このカレーのCMの「大地をいただけ!」というのは命令形だと思います。
この場合、動作の主体は誰になるのでしょう?
CMに出ているタレント、あるいはテレビに視聴者=商品を買ってくれる消費者、ということになりそうです。
という風に考えると、タレントや視聴者=消費者に命令したうえで、他人である命令する相手の動作に謙譲語を使っているわけで、首をかしげたくなる表現であることが分かると思います。

使う方はおかしいと思わないので使っているのでしょうし、”苦情”など来ていないので放送され続けているのだと思います。
「キャッチコピー」を考える人(コピーライター?)は、言葉に関するプロだと思いたいのですが、テレビ局で働いている人間は、必ずしも、「言葉のプロ」ではないのが実情ですし…。

テレビのニュースでは、よく食べ物・料理店に関する”ネタ”を放送しています。
ここでも、「いただく」という表現が出て来ます。
「おいしい××をいただける店」など…。

こうして考えてみると、「謙譲語」という概念をよく理解せずに、単なる「丁寧な表現だ」と考える人が増えているのではないか、と思います。

けさ、小泉首相が靖国神社を参拝した際、テレビでベテランのアナウンサーが「小泉総理が車から下りて参りました」など、「参る」という表現を使っていました。
皇室関係のニュースなどでも、皇族に対して「参る」という言葉を使っている例が最近、よく聞かれます。
こうした場合、やはり「謙譲語」を「丁寧語」と混同しているのではないか、と思われます。
ちなみに、「参る」を辞書で引くと、「『行く』の謙譲語で、行く先方を敬う。」となっています。

言葉は生き物ですから、間違った表現でも、多くの人が抵抗感を抱かずに、使い続ければ、そのうち”普通の表現”として受け入れられるのかもしれませんが…。


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コメント 2

SKinsui

言葉は生き物で意味も形もどんどん変わっていくというご意見に賛成です。また、言葉の感じ方も、人によってさまざま、というのが実態だろうと思います。だからといって、野放図にどんな言い方も許される、というわけではありませんが。パブリックな立場で言葉を発信する人は、「多数の日本人に違和感なく受け入れられる表現」を押さえた上で、時々、高等わざとして「そこからちょっとずらした表現」なども使ったりするのでしょう。

ところでこの「大地をいただけ」は、本来の謙譲語の「いただく」である可能性と、一種の「仲間言葉」みたいなものかもしれませんね。例えば海賊が、
「こんどはあの船のお宝をいただこうぜ」
みたいな用法です。あんまり品がよくないですが、仲間内の結束の強さが暗示されます。そんな感じで、
「大地の恵みをいただいちまおうぜ」
といった語感で表現されているのかもしれませんね。そうだとすれば、あまり違和感がない気もします。一つの意見として、ご参考まで。
by SKinsui (2006-08-21 09:19) 

Lionbass

Skinsuiさま
(早速の)コメントありがとうございます。

なるほど、「高等わざ」なのかもしれません。
私も「みんなが違和感がないなら、しょうがないか…」とは思ってはおります。

例に挙げられた、海賊の「いただこうぜ」の場合ですが、「いただく」主体に自分(発言者)が含まれているので、そんなにおかしくないのでは、とも思うのですが…。
by Lionbass (2006-08-21 10:55) 

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