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オーケストラへの補助金は「遊興費」なのか? [音楽・楽器]

きのうはお休みで、午前中、CS放送の「sky A+」で佐渡裕指揮、RAI管弦楽団(イタリア)の「ペトルーシュカ」(ストラビンスキー)などを聴きました。

さて、先日も書いた大阪センチュリー交響楽団への補助金問題ですが、これに関してはあちらこちらで論議がわき起こっています。
その中で、mixiでは大阪府の財政を家計に見立て、「家計が苦しいときは遊興費(娯楽費)を削るのは当然」というコメントが見受けられました。

私は、それはおかしいと思うので、「反論」を書き込んでおきました。
長文ですが、その「反論」をここに再録します。(ちょっと書き足しました。)

ご意見などありましたら、是非書き込んでください。

<以下採録>
*******************
オーケストラへの補助金を家計における遊興費や娯楽費に例えるコメントをお見受けします。
果たしてそのような考え方でいいのでしょうか?

▼「遊興費?」「娯楽費?」—家計に例えると…
「遊興費」という言葉をお使いになった方がどんなものを念頭に置いているか分かりませんが、「遊興」を辞書を引くと「遊び興じること。特に酒色に興じること」などと出ています。

また、「娯楽に金が出せるか」との書き込みもありました。
「食費や家賃を削ってまで遊びに行こうとは思わないはず」とのコメントもありました。

果たして、オーケストラへの補助金は、「遊興費」や「娯楽費」なのでしょうか?

私は、よい音楽を住民に聞いてもらうための自治体の費用は、家計で言えば「教養費」としての側面があるのではないかと思います。
例えば、「小説を読むための出費」とか「いい映画を観るためのチケット代」だと考えるとどうでしょう。
「教養」というものは、直接何らかの具体的な利益を生み出すものではありませんが、(長い目で見ると)人生を豊かにし、人間性を育むものだと思います。

(家計の例えで言うと)ある家庭が(何らかの事情で)収入が激減して赤字になった場合、例えば「食費」「住居費」は「300円のフランスパンを 88円の食パンにする」「月30万円の高級マンションから5万円のアパートに引っ越す」など出費を減らすことになるかもしれません。
でも、「読書量は減らさない」という努力をすることは可能ではないでしょうか?
(もちろん、読書量を減らさずに出費を抑えるため、「古書店で買う」「単行本を文庫本に換える」「図書館を利用する」「友人・知人に借りる」などは方策はあると思いますが…。)

あまりいい例ではないかもしれませんが、この例のように、「何を減らして、何を減らさないか」はまさに家計を預かる責任者の舵取りが問われるのではないでしょうか?

今回の例は、「貧乏なんだから、食費も住居費も減らす。小説なんか読まなくても仕方ない」というやり方だと、私は思います。
まさに、大阪府や橋下知事の「文化に関する考え方」が問われているのではないでしょうか?

話は前後しますが、オーケストラを「遊興」「娯楽」と見る人は、オーケストラを聴くことを「単なる暇つぶし」あるいは「楽しければいい」と見ているように思います。
もちろん、いろんな楽しみ方があっていいので、そうした面は否定しませんが、それだけではないと思います。

▼オケにかかるのは金だけではない…
「お金がないからオケなんかやめてしまえ」と考えている人は、裏返せば「いい音楽(いいオケ)はカネさえ出せば作れる」と考えているのだと思います。
「ホールを造ればいい音楽がやってくる」と思っている自治体や、「オケや室内楽合奏団を作って、メンバーはよその土地から呼んでくる」例など、これまでにもありました。

でも、オーケストラを創り、育てて行くということは、お金だけで可能になるわけではないでしょう。
オケを創設し、育て、地元に根付かせるには、費用だけでなく、多くの人の努力と時間が必要です。

確かに、普段オーケストラを聴く人はそんなに多くないかもしれません。
「クラシックを聴かなくても何も困らない」という人も多いでしょう。
でも、普段オケを聞かない人にその機会を与え、クラシックファンを増やすのも重要な役割でしょう。
いい音楽を聴く機会がたくさんあって、クラシックのファンがいる自治体は、文化的に豊かだと言えるのではないでしょうか。
少なくとも、このコミュニティーのメンバーは分かってくださると信じています。

ついでですが、「オケが4つあるから1つ減ってもいい」という論議は、突き詰めれば「1つあればいい」とか「どこかから呼んでくればいい」というのと同じ方向に行くのではないでしょうか。

私は、今回の大阪府の方針を詳しく知っているわけではないので、来年度以降なくなる補助金の代替策が何かあるのかもしれません。
また、前述の読書の例で言えば、「出費を抑えながらオケの活動を減らさない」ための方策が何かあるのかもしれません。
また、今回の方針は実は一時的なもので、将来に向けて私たちの知らない何かがあるのかもしれません。

もしそのあたりをご存知の方がいらっしゃいましたら、是非教えてください。

長くなりましたので、この辺にしたいと思います。
*************************
<採録終わり>


私の上記書き込みに対し、以下のような「反論」がありました。


<以下「反論」の要旨>
****************
クラシック音楽には教育・文化的な面があることは多分に承知している。
しかし,別にプロオケが一つ減ったぐらいで大阪府の文化水準が下がるとは思えない。
大阪府にはアマオケがたくさんあり,一般の方がクラシックを楽しみたいと思えばそれで間に合うのではないか?
一回の演奏会に1万円近いお金を出してプロオケの演奏会を聴きに行く人など,大阪府民のほんの一握りである。
「大阪府の文化に対する考え方」が問われていると考えるなら,それ以前に「文化の公共性」についても考えてほしい。
今回の政策方針は橋本知事を選んだ大阪府民の民意の表れである。
**********************
<「反論」要旨終わり>


これに対して「再反論」しましたので、これも採録します。



<以下「再反論」>
**********************
×××さま
こんにちは。
早速のコメントありがとうございます。
言葉尻を捉えた書き込みのように受け取られたとすれば、本意ではありません。
(お分かりいただけると思いますが、娯楽に例えた書き込みも別にあり、それに近い考え方の方が他にもいると思いましたので、上記のような書き方をしました。)

>しかし,別にプロオケが一つ減ったぐらいで大阪府の文化水準が下がるとは思えません。大阪府にはアマオケがたくさんありますし,一般の方がクラシックを楽しみたいと思えばそれで間に合うのではないですか?

これについては上に書いた通りです。

>また,今回の政策方針は橋本知事を選んだ大阪府民の民意の表れなのです。そのことをお忘れなのではないでしょうか

選挙というものは、あくまで立候補した人の中から選んだ人に投票するものであって、選ばれた人の行う施策や考え方(さらには人格)をすべて認めることにはならないのではないでしょうか?
横山ノックを選んだからと言って、「彼のやることはすべて認める(認めていた)」という人は恐らくいないでしょう。

今回は、確かに「赤字や無駄遣いをなんとかしてくれ」と思って橋下候補に投票した人は多いのでしょう。
しかし、一つ一つの施策については、意見を言うことは認められるべきですし、もしおかしいと思ったら議会などを通してただして行く余地は残されていると思います。

「いったん投票したからには文句(意見)言うな」というのは独裁につながるのではないでしょうか。
「しばらく任せてみよう」という意見があるのは、分からないでもありませんが…。
***************
<「再反論」終わり>

「大阪センチュリー交響楽団を応援する会」
http://osaka-century.sakura.ne.jp/
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syunpo

お久しぶりです。
基本的にLionbassさんの御意見に同意です。

そもそも行政府の財政を家計にたとえること自体、議論を混乱させるだけの不適切な議論の仕方ですね。
Lionbassさんは、反論するために、あえてその土俵で議論なさったのだと理解していますが、財政と家計は、根本的に異なる性質のものです。
家計における支出は、すべて1対1の対応をしていて、市場で貨幣を支払って商品やサービスを買う、という形式をとります。しかし財政は違います。税を納める人と、その行政府が提供する公共サービスを受け取る人とは必ずしも一致しません。また市場でやりとりすることの困難なサービスや文化・教育的事業を受け持つという側面もあります。そういう根本的に違う経済活動を同一に論じて、さらにオーケストラ活動を「遊興費」などに喩えるのは、まったくナンセンスです。

「今回の政策方針は橋本知事を選んだ大阪府民の民意の表れ」というのは、原則そのとおりかもしれませんが、だからといって、すべての政策に従わなければならない政治的理由のないことは、おっしゃるとおりだと思います。二元代表制をとる地方政治においては、首長の政策判断は、もう一つの「民意」である議会のチェックを受ける必要もあります。議会での審議に反映させるためにも、一般市民が自由に意見を述べるのは当然のことです。

ちなみに、私は大阪府民ですが、橋下氏には投票してませんし基本理念にも賛成していません。財政再建が自己目的化しているように見受けられ、その意味で政治の基本的役割を忘れてしまっているのではないか、と大変懸念しています。
by syunpo (2008-04-16 20:21) 

Lionbass

syunpoさま
丁寧なコメントありがとうございます。
「財政と家計は違う」とのご指摘、その通りだと思います。

国家レベルで見ると、「国民は餓死しているのに核兵器をつくる」という独裁者は、現在のある国だけでなく、歴史的にも存在しました。
指導者が、大きな予算と権限を持っていれば、(核兵器ではないにしても)こうした間違った使い方だってできると思います。

幸い、日本は独裁国家ではないはずなので、間違いはただされることを願っています。

by Lionbass (2008-04-17 13:31) 

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