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「お笑いが大阪の文化の基本!?」=大阪センチュリー問題・その後= [音楽・楽器]

大阪府の財政難に伴い、橋下知事が大阪センチュリー交響楽団への補助金削減(全廃)を打ち出した問題については、何度か書いてきました。
「大阪センチュリーと大フィルの話を書こうと思ったら…」
「オーケストラへの補助金は『遊興費』なのか?」
<ついでに「『アマ管弦楽団なぜ増える』(某新聞の記事について)」もお読みください。>

その後も、新聞などではいろんな見方が紹介されています。
こちらは東京新聞の特集記事。(4/30)
IMG東京新聞2+.jpgIMG東京新聞+.jpg

記事の中で、道頓堀で話を聞いた男性会社員が「オケがなくなるなんて、大阪の文化度が低いと思われるのが心配やね。府は4億円くらい出せんのかね」という意見も紹介されている一方、大谷昭宏氏(元読売新聞)は「教育や子育てのカネが削られる中、一つのオケが4億円を受け続ける理由はない。文化なら何でも残していいものではない」などという発言も。
(論評は差し控えましょう。)

一方こちらは、読売新聞に載った評論家、山崎正和氏の論評。
「財政難 文化削る病弊」「大阪の品格を問う」との見出しが見えますが、今回の橋下知事の方針を「文化行政の殲滅作戦」と呼び、厳しく批判しています。
Img讀賣.jpg

その橋下知事、大阪センチュリーへの補助金を、これまでの約4億円から4分の1の約1億円に削減する方針を固めたと報道されています。

私は個人的には、補助金の若干の削減(例えば20〜30%減額)はやむを得ないとしても、3年とか5年程度の期間をかけてやるばきだと思います。
「1年だけ4分の1、その後はゼロ」というのは、言葉は悪いですが「刑の執行」が先延ばしになっただけではないでしょうか。


ところで、先週、橋下知事が府庁の生活文化部と議論した様子がニュースなどで放送されていました。

その中で知事は、「大阪センチュリーは府民に根付いているんですか?」と何度も質問していました。
この質問、何となく聞き流してしまいそうですが、よく考えると、何をもって『根付いている』というのか、定義・判断基準もなく、相手がどのように答えようと、「私は根付いていると思いません」と言えばそれ以上反論できなくなる、きわめて感情的・主観的な議論ではないでしょうか?

自分の部下である府の職員と協力して、よりよい結論を導こうといいうようには見えませんでした。
法廷で弁護士として自らの主張を有利に展開するには、このようなやり方もあるのかもしれませんし、「あえて戦略的にそのようにしている」のかもしれません。

知事はまた、「行政や財界は、ちょっとインテリぶってオーケストラとか美術館だとか言うが、大阪はお笑いの方が根付いているというのが素朴な感覚」と言ったそうです。
そのうえで、「お笑いが大阪の文化の基本」とも言ったとか…。

個人的にそのように思うのは勝手ですが、以前も書き込みしましたように、文化の大切さを知らないだけと思わざるを得ません。

以前書いた家計の例えでいえば、「(教養につながる)小説や音楽に金は出せないから、テレビのお笑い番組でも見とき」と言っているかのようです。

「文化は大切だが、非常事態なのでしばらく我慢してください、協力してください」というのなら、まだ理解できるような気がしますが、「文化なんか要らない」というのは、見識を疑わざるを得ません。
まあ、「ショック療法」(?)であればいいのですが…。
(大阪府がかなり大胆な改革が必要であることは確かなようですし、普通の方法ではダメだろう、ということも理解はできますので…。)

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コメント 6

whitesox

難しい問題ですね。正直分かりません。衣食足りてという言葉もありますし、パンのために生きるのでもないということばもありますし、オケの4億円の問題だけでなく、予算全てをもう一度見直して、何を優先するか何を削るかという議会や府民のもう少しの議論が必要かもしれませんね。
by whitesox (2008-06-03 10:05) 

ぬれぴよこ

この話題についてはよくテレビなどでも目にしますが、難しい問題だと感じています。
思い切った改革をしないといけないということは、素人の私にもわかりますが、
どこを削るべきかは、やはり意見を聞くことが必要だと思いますし、
例え何かについて経費を削ると決まったとしても、
やはりものの言い方には気をつけるべきかと・・・

主観というものもあるでしょうが、立場を考えたら、言葉の重み(社会に与える影響)にも責任を持たなければいけないと思いますので。
by ぬれぴよこ (2008-06-03 22:40) 

syunpo

橋下知事のこのたびの文化やお笑いに関する発言は、Lionbassさんはじめ、すでに多くの批判が出ていますので、ここに付け加えることはありません。それで、私はもう少し財政の基本的なことを書かせていただきます。

私のブログでも触れてきましたが、そもそも、何故一挙に1億1千万円の削減をせねばならないのか、の検討がまったくなされていないのが不思議でなりません。「財政難だから……」という大雑把な前提で議論する前に、知事の打ち出した急激な削減策のフレームそのものを吟味する必要があります。

そもそも何故「財政改革」を行なわねばならないのか。
それは、このままズルズルいくと「財政再生団体」に転落してしまうから。
ならば、何故「財政再生団体」になることを回避しなければならないのか。
「財政再生団体」になると中央政府の統制下に入って自治体が独自事業をすることが困難になり、府民に対する行政サービスの低下を招くから。

しかるに、今、橋下知事が推進しているのは、財政学者の神野直彦がいみじくも指摘しているように、自治体としての独自事業を切り、府民へのサービス低下を促すものです。事実上、財政再生団体に準じるようなパフォーマンスを自分たちの手で先取りしているにすぎません。いかなる看板のもとに行なわれようとも行政サービスの著しい低下であることに大差はありません。その意味で知事のやっていることを財政「改革」と呼ぶに値するものであるかどうかさえかなり疑問です。
実際に、もう少し中長期的な展望にたってソフトランディングする再建案も出ているのに、何故それを考慮しないのかまったく説明をきいたことがありません。「短期的に集中的にやらないと改革はできない」などという思い込みで進めているだけではないですか。知事が根拠も明らかにせず提示している土俵のうえで多くのメディア人も有権者も躍らされている、という印象ですね。大谷昭宏氏なんてジャーナリストとしては完全に失格です。

ちなみに大阪センチュリー交響楽団への補助金は、基本的に「大阪府文化振興基金」から拠出されているもので、全額を一般財源(いわゆる血税ですね)に依存しているわけではないことは注意を要します。また(準)公立の事業体が積極的な営業活動をして目立ってしまうと、「民業圧迫」との批判が出ることもあったという事実も考慮に入れてあげなくてはなりません。

繰り返しますが、「文化と財政」の関係についての議論をする前に、なされるべき財政上の議論があるはずなのです。
長文失礼しました。
by syunpo (2008-06-04 11:02) 

Lionbass

whitesoxさま
おっしゃるとおり、本当に難しい問題ですね。
大阪府が非常事態なのは確かだと思います。
また、ここまでひどい状態にした責任は、これまでの知事や職員、それに府民にあるのでしょう。
でも、大阪府は夕張市などとは規模や責任・役割が違うのではないかと思うのですが…。
by Lionbass (2008-06-06 15:36) 

Lionbass

ぬれぴよこさま
ご指摘の通り、予算削減の是非に加えて、知事の言動・見識が問われていると思います。
あの「物議をかもす」言動は、”ショック療法”だと信じたいのですが…。
by Lionbass (2008-06-06 15:37) 

Lionbass

syunpoさま
詳しいお話をありがとうございます。
おっしゃる通り、行政の運営の目的と手段を混同しているという気もします。
借金の減額や財政の健全化は、「よい行政サービス」を提供するために必要なことなのに、財政自体が目的化してそのために行政サービスを犠牲にするのは、考え方の順番が違うような気がします。
by Lionbass (2008-06-06 15:40) 

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